弊社では他社で制作されたWordPressサイトの保守管理を引き継ぐご相談を、継続的にお受けしています。

その中で年々強く感じていることがあります。

それは、「制作時点でユーザー満足を満たすこと」に重点が置かれているサイトが多い一方で、「5年、10年と運営し続けること」を前提に作られているサイトが驚くほど少ない、ということです。

ホームページは、納品された瞬間がゴールではありません。納品の翌日から何年にもわたって運営を続けていくものです。

しかし現場を見ていると、制作会社の多くが「公開時点でのユーザーの満足度」を最優先し、「10年後に誰が、どうやって運用していくか」という視点が欠落しているように感じます。

弊社が実際に保守管理の引き継ぎのご相談を受ける中で繰り返し見てきた問題をこの記事で取り上げてみようと思います。

これから制作を発注される事業者様が「どこを判断基準にすべきか」のご参考になれば幸いです。

制作期間と運用期間はまったく釣り合っていない

ホームページの制作期間は、一般的に2〜3ヶ月です。

一方、運用期間は5年、10年、長ければ15年以上に及びます。

つまり、サイトのライフサイクル全体で見れば、「制作期間は全体の1〜2%程度」ということになります。

それにもかかわらず、制作会社の多くは制作期間の満足度を最大化することにエネルギーを注ぎ、残り98%の運用期間については「引き渡したらあとはそちらでお任せします」という姿勢で終わってしまうケースが少なくありません。

実は保守管理は、Web環境の変化への対応の継続が求められるため、制作よりも大変なのです。

この部分が僕が一番の問題だと思っているところであり、運営や保守に困っている事業者のサポートである保守管理を、弊社が強化している理由でもあります。

引き継ぎ時に繰り返し見る5つの問題

実際に弊社が引き継ぎのご相談を受けるサイトで、具体的にどのような問題が起きているのかを、1つずつ事例を取り上げてみます。

1. PHPのバージョンアップができずに固まっている

現在のWordPressはPHP 8.3以上が推奨環境で、PHP 8.1以下はすでにセキュリティサポート期限を迎えています。

それでも、PHP 7.4のまま運用されているサイトが現在も多く残っています。

既にサポートが終了した古いテーマを使用しているケースでは、たとえ最新のバージョンであってもエラーが発生する可能性があります。

開発元からのサポートを受けられないオリジナルテーマは、「自力で問題の箇所を発見・修正する必要があり、WordPress・PHPの専門知識と多くの対応時間が必要となります。

つまり、オリジナルテーマで作られたサイトは、制作会社が継続サポートしてくれない限り、PHPバージョンアップという「当たり前のメンテナンス」すら困難になるわけです。

この状況であれば、小規模サイトではリニューアルの方が早くて安く済む場合もあります。

WordPressのPHPとデータベースのアップデート&再構築事例

~見た目はそのまま、土台のみ最新化し、安全性と更新しやすさを実現~ 東京都杉並区のトリミングサロンDOGFELLOW様は、地域のお客様に愛される店舗として、ホームページを予約と情報発信の拠点にしてきました。 6年ほど前に […]

2. 管理画面から修正できない「ハードコーディング」構造

WordPressは本来、固定ページや投稿ページから管理画面で文章や画像を編集できるのが最大のメリットです。

Wordを使える人であれば、ほとんどの修正が自社で可能な仕組みです。

ところが、制作会社がオリジナルテーマを作る際に、本文や画像をテンプレートファイル(header.phpなど)の中に直接書き込んでしまっているケースが多く見られます。

これを「ハードコーディング」と言います。

中小企業のWordPressサイトは「オリジナルデザイン」で制作してはいけません

ホームページを外注で制作会社に依頼する場合は、もしあなたがWordPressで自社管理を行いたいのであれば、オリジナルデザインでの制作は避けるようにしましょう。 この場合のオリジナルデザインというのは、制作会社が個別にテ […]

この状態になると、WordPressの管理画面からは「単語一つ」すら修正できません。

結果として、小さな修正のたびに制作会社に依頼することになり、そのたびに費用が発生します。

テーマ独自のエディタや独自機能に依存している場合のリスクとしては、使い慣れたテーマに依存する独自のエディタは使えなくなり、使用感が変わるだけでなく、デザインやレイアウトも崩れる可能性があります。

オリジナルテーマの独自機能が多ければ多いほど、将来テーマを変更したり他社に引き継いだりする際の障壁が高くなります。

3. 大掛かりな調査が前提になってしまう

オリジナルテーマで作られたサイトを別の会社が引き継ぐ場合、まず必要なのは「どう作られているかの調査」です。

どのテンプレートファイルに何が書かれているか、どのプラグインがどういう役割を持っているか、独自に追加されたカスタムコードはどこにあるか。これらを読み解かなければ、安全に修正作業を進めることができません。

この調査には相応の工数がかかります。

弊社でも、「ちょっとしたテキスト修正をしたいだけ」のご相談が、蓋を開けてみるとテーマ全体の構造解析から始めなければならず、結果として10万円規模の費用になってしまうケースが多いです。

それ以上になってしまうと、お客様側としては調査だけに多額の出費を伴うことになり、満足度が下がるためお断りしております。

ホームページが制作会社に依存してしまう構造をご存じですか?

こんにちは、ウェブロードの山口です。 今日は、ホームページ制作について、弊社が創業当初2006年から大切にしている考え方をお話ししたいと思います。 少し意外に聞こえるかもしれませんが、「WordPressサイトはオリジナ […]

これは、お客様にとっても制作会社にとっても不幸な構造です。

しかし、制作時に「他社でも引き継げる構造」を意識していなかった結果として、こうなってしまうのです。

4. プラグインの依存関係とセキュリティリスク

納品時のドキュメントに「どのプラグインをどこにどのように使っているか」が残っていないサイトも多く見られます。

結果として、あるプラグインを更新・削除したら別の機能が止まった、同じ機能のプラグインが複数入っていた、更新が何年も止まっている危険なプラグインが有効化されたままだった、といった状況を目にすることは、僕にとっては日常茶飯事です。

以前のメルマガでもお伝えしましたが、WordPressの脆弱性の96%はプラグインに起因するというレポートが出ています。

サーバー内に放置されたテスト用WordPressが会社の信頼を壊す理由

今回は、多くの中小企業の経営者様やウェブ担当者様が見落としがちな、深刻な「セキュリティの盲点」についてお話しします。 「自社のメインサイトは、WordPressもプラグインも常に最新にしているから大丈夫」と思われているか […]

つまり、プラグインの管理が雑になっているサイトは、ほぼ確実にセキュリティリスクを抱えている状態ということです。

5. ログイン情報・契約情報が引き継がれていない

サーバー・ドメイン・WordPress管理画面・プラグインのライセンス、これらのログイン情報や契約先情報がまとまって渡されていないケースも非常に多いです。

制作会社が引き続き管理されていて、年間1万円程度のドメイン・サーバー料金を支払っているのか、実際のサイト運営事業者側が、全く把握していないというケースも結構あります。

制作会社が廃業したり、担当者と連絡が取れなくなったりすると、引き継ぎ先はゼロから情報を探し出さなければなりません。

ドメインの管理会社がわからず更新期限を過ぎて失効した、という最悪のケースも実際に目にしました。

ウェブロードでは、お客様ご自身の名義で、ドメイン・サーバーを管理されることをお勧めしています。

一番のおすすめは弊社が20年以上利用しているエックスサーバーです。

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費用の問題ではなく、構造の問題

ここまで読んでいただいて「それは制作会社選びの問題では?」と感じた方もいらっしゃると思います。

もちろんその通りなのですが、実はもう一段深い問題があります。

それは、こうした問題の多くが「悪意」や「能力不足」から起きているのではなく、「制作時点のお客様満足を最大化する」という発想から自然に派生してしまう、ということです。

お客様が「こういうデザインにしたい」「こういう動きを入れたい」と要望すると、制作会社はそれに応えるために独自コードを書きます。

その瞬間は、お客様も制作会社も制作完了時点では双方ともに満足します。

しかし、その独自コードが5年後、10年後に「PHPバージョンアップができない原因」になり、「他社に引き継げないサイト」を生み出してしまうのです。

つまり、制作時点の満足度と運用フェーズの持続性は、放っておくと対立してしまう関係にあります。

ここを意識して両立させることができる制作会社かどうかが、発注時の最大の判断基準になります。

発注時に判断すべき5つのポイント

では、具体的にどこを見て制作会社を選べばいいのでしょうか。弊社の経験から、以下の5点をお勧めしています。

1つ目:本文や画像を管理画面から自社で修正できる構造か

「納品後、簡単な修正は御社で対応できます」と明言してくれる会社を選んでください。「修正はすべて弊社で承ります」という会社は、長期的に見てコストが膨らむ可能性が高いです。

2つ目:オープンソースのテーマをベースに作っているか

世界中で使われているテーマ(Lightning、Cocoon、SWELL、GeneratePressなど)をベースに作られているサイトは、情報がネット上に豊富にあり、他社への引き継ぎもスムーズです。「完全オリジナルテーマ」という言葉には警戒してください。

3つ目:PHPやWordPressのバージョンアップ対応を継続してくれるか

保守契約の中に「PHPバージョンアップ対応」が含まれているか、オプションでどう対応してくれるかを事前に確認しましょう。

含まれていない会社は、5年後に必ず問題が起きます。

4つ目:ドキュメント・引き継ぎ資料が用意されているか

プラグイン一覧とその役割、ログイン情報、契約先情報がまとめられた資料を納品時に提供してくれるかを確認してください。

これがないと、将来他社に引き継ぐ際に大きな負担になります。

5つ目:他社への引き継ぎを前提とした構造になっているか

「うちで作ったサイトは、他社にも引き継げるよう意識して作っています」と言える会社を選んでください。

これは一見、制作会社にとって不利な方針に見えますが、むしろ長くお付き合いできる誠実な会社の証です。

10年トータルコストで判断する

制作費用だけを比較すると、運用設計まで考えて作る会社は割高に見えることがあります。

しかし10年のトータルコストで見ると、以下のような費用が積み重なっていきます。

  • 毎回の修正依頼費用(年間数万〜数十万円)
  • PHPバージョンアップ対応費用(数年に一度、数万〜数十万円)
  • セキュリティトラブル発生時の復旧費用(発生すれば数十万〜数百万円)
  • 他社への引き継ぎ時の調査費用(数十万円以上になることも)

これらを含めて計算すると、「制作時は少し高くても運用しやすく作ってある会社」の方が、圧倒的にリーズナブルになるケースがほとんどです。

特に外部の制作会社に作ってもらい、その後は自社で運営管理していく予定の場合、この視点は決定的に重要です。

「ちょっとしたテキスト修正のたびに制作会社に数万円払い続ける」という未来にならないために、発注時の判断基準を制作クオリティだけでなく運用しやすさに置いてください。

投稿者プロフィール

山口 敦
山口 敦
2004年頃の会社員時代からブログ作成を始める。ブログ作成が楽しくなり、そのまま趣味が高じて2006年にホームページ制作で起業、2008年に株式会社ウェブロードを設立。現在は、個人・中小事業者のWordPressサイト制作・改善を中心に、Web業界20年の知識と経験を生かして、自治体案件等の大型案件のWebディレクターや中小企業・個人事業主へのWeb全般のアドバイザー、SEO/AIOのコンサルタントとしても活動中。 プロフィールはこちら

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